表面にナノ反応場を形成した高選択酸化触媒の研究開発

 触媒の役割の一つに、より小さなエネルギーで目的物質をいかに大量に作るかというのがあります。そのためには余分のものを作らず、高選択的に目的物質を作らねばなりません。
 メタンから酸素を使って一段でメタノール、ホルムアルデヒドを作る反応は、アメリカ化学会が21世紀に開発を望んでいる10個の反応、いわゆるドリームリアクションに含まれる反応です。

 我々は現在、酸化スズを活性な触媒として、その表面をスズ以外の別の金属酸化物を使ってサークル上に囲み、その中にナノサイズの反応場を作ることで選択的にメタノール、ホルムアルデヒドのような含酸素化合物を作ることが出来ないかと考え、検討しています。これは大平原の中にナノサイズの環状の砦を作るようなもので、この砦の外から酸素という外敵が攻め込んでくるのを防いでいる間に、中の酸素だけを使って特定の酸化物を作ろうとするものです。この研究は、独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)の環境ナノ触媒の研究として推進されています。

 
  酸化スズ表面にゲルマニウムの囲いでナノ反応場を作り、活性酸素の数と動きを抑制する。このナノ反応場でメタンから高選択的にメタノール、ホルムアルデヒドを作製する。
            可視光応答光触媒の開発

 太陽からの光エネルギーを利用して水から水素を取り出すことは、酸化チタンをはじめ、いくつかの酸化物で報告されています。これらは太陽光の中、わずか数パーセント含まれる紫外線を利用したもので、可視光線での水素の生成は困難です。最近、東京大学の堂免先生が窒化物を利用し可視光照射下で水素の生成が可能であると報告されています。

 しかしながら生成量はまだまだ少なく、更なる効率の向上が求められています。この太陽光を利用した水から水素の生成は、人類にとって非常に重要な反応です。我々の研究室でもこの困難な課題に挑戦しています。具体的には、単一の半導体酸化物をペロブスカイト型複合酸化物にすることで、バンドギャップの制御を試みる事からスタートしています。

                                                       
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               メタンの低温酸化触媒

 メタンは炭化水素の中でも最も酸化しにくい物質です。このメタンは、自動車の排気ガス中にも含まれます。冬季の寒い朝にエンジンを稼動したりすると、触媒の活性化温度に達しない為に、排気ガス中の有害物質、特にメタンのように難酸化物質はそのまま排出されます。

 アルデヒド、ベンゼン、トルエンなどの有害物質は私たちの暮らしの身近なところでも観測されます。これらの物質は通常低濃度ですが、処理する必要があります。できれば温度をかけずに室温に近い条件で処理したいものです。

  上に示したように金属酸化物表面には色々な酸素種が存在していることが報告されています。その中でもO-はとりわけ酸化活性が高いことが知られています。我々はこの活性酸素種O-を有効に使って低温酸化活性の高い触媒を作ることを目的に研究を進めています。

低温酸化触媒は温度の効果だけでなく、光照射効果についても調べています。そのために反応装置に紫外線ランプを取り付けて、酸化活性に対する効果を調べています。